包括システムによる日本ロールシャッハ学会JRSC公式ホームページ

企画図書

◇学会編集図書

包括システムによる日本ロールシャッハ学会編
ロールシャッハとエクスナー ロールシャッハ・テストの起源と発展

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まえがき

 包括システムによる日本ロールシャッハ学会の設立10周年を記念して,学会企画として本書を出版できたことを心から嬉しく思っている。会員を代表してこれまでこの学会を支え,応援し,関わってくださった多くの会員,諸先生方に感謝申し上げたい。

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 包括システムによる日本ロールシャッハ学会(Japan Rorschach Society for the Comprehensive System:略してJRSC)の生みの親は,ほかならぬJohn E. Exnerである。

Exnerがロールシャッハのワークショップのために来日したのは1992年10月,小田原で開催した5日間の基礎講座がその最初であった。Exnerはそのときの参加者の生真面目さと学ぶ意欲に感動されたようである。
 1年後1993年にはIrving B. Weinerとともに再来日され,2日間の子どもと思春期のワークショップならびに3日間の解釈を学ぶワークショップが東京で行われた。

 そして,その年1993年の国際ロールシャッハ学会(International Rorschach Society:略してIRS)リスボン大会で,「包括システムによる日本ロールシャッハ学会」が30人未満の小団体で団体登録され,日本で認知されるより先に国際ロールシャッハ学会において産声をあげることとなった。

 1994年に「包括システムによる日本ロールシャッハ学会」設立総会を開催し,Weinerによる設立記念講演を行って学会が発足した。設立総会直後,会員数は100名あまりとなり,思えば最初から活発で勢いのある学会のスタートであった。

 1995年に第1回の学会大会を開催して以来2004年の第10回大会まで,年次大会を開催してきたが,1999年と2002年には再びExnerのワークショップおよび特別講演を学会の企画として提供することができた。

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 本書は,この最後の2回のExner来日における本学会でのワークショップと特別講演の記録である。

 学会の企画として,これまでのExnerの記録を本にまとめようと考えたのには主に三つの理由がある。

 その一つは,Exner自身の事情にある。Exnerは現在,講座や講演などの教育現場からは完全に引退し,IRSでの活動とスイスにあるロールシャッハ・アーカイブス博物館の館長としての職務に専心されている。

 お住まいの,アメリカのノースキャロライナ州アシュビルから極東の東京はあまりにも遠く,再びこの日本の地で私たちのリクエストに応えて日本人のロールシャッハ・プロトコルを詳細に解釈して見せてくれるということは期待できなくなった。

 そのような現実を踏まえると,たびたびの来日でExnerが私たちに残してくれた解釈のお手本や特別講演は,どれもが,ヘルマン・ロールシャッハと現代をつなぐ架け橋となる内容だったことに気づいたのである。第二の理由はそこにある。

 2005年3月現在JRSCの会員は450名あまりになった。Exnerが残してくれたヘルマン・ロールシャッハと現代の私たちへの架け橋を,目に見える形にして残さなくてはあまりにももったいない。

 最後の理由は,ヘルマン・ロールシャッハ自身が1920年に自分の患者に施行したロールシャッハの事例を,80年以上経ってからExnerが発掘し,解釈をして現代に甦らせたという大変貴重な経験を残して共有せずにはおけないと考えたからである。

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 当時へルマン・ロールシャッハは12枚一組の図版を使っていた。それを現行の10枚にするには無理があるし,ヘルマン・ロールシャッハのロールシャッハ記録は達筆なドイツ語で書かれており,その記録を英語に翻訳するのが一苦労だったようである。

 本文でExnerも触れているが,ドイツ語から英語に翻訳し,それをさらに日本語に翻訳しているという翻訳のプロセスだけでなく,1920年当時へルマン・ロールシャッハが『精神診断学』を完成する以前に試行錯誤しながらロールシャッハ法を編み出す中で残した記録を,現代の包括システムのコードに置き換えるには高度な判断を必要とすることが多かったようである。

 それらを考慮してもなお,現代に甦るヘルマン・ロールシャッハの「仕立て屋」のうつ病患者のケースは一読の価値がある。

 最後に本書に掲載した構造一覧表について技術的な注釈を加えたい。Exnerが来日した1999年と2002年の間,2000年に構造一覧表の改定があった。
 そのため,1999年の特別講演(第Ⅲ部)で参照した構造一覧表はExnerの提示した旧バージョンのままで掲載したが,1999年のワークショップで扱ったケース(第Ⅱ部第1章と第2章のケース)は,ほかのケースと同様に現行の構造一覧表に置き換えて提示した。いささかの混乱があるかもしれないが,旧バージョンと最新版の構造一覧表が入り乱れるのを避けたためであり,本書を読み進める上での不都合がないように注釈を適宜入れてある。

 本書が,Exnerの真意を伝える役割を果たし,包括システムの垣根を越えてヘルマン・ロールシャッハの意思を継ぐさまざまな研究者,臨床家,専門家,学生の方々にその真意が届くことを願っている。

2005年3月 包括システムによる日本ロールシャッハ学会 会長 中村紀子

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ISBN978-4-7724-0868-4
 ロールシャッハ・テストがいかに生まれ,発展していったのか――本書ではまず,その創始者ヘルマン・ロールシャッハの生い立ちから『精神診断学』の発刊にいたる慎重にして困難な道のり,さらにこのテストに無限の可能性を抱きながら夭逝したヘルマンの思いまでが,エクスナーによって親しみを込めて語られる。さらに本邦にはじめて紹介されるヘルマン自身による「仕立屋のケース」は貴重な資料であるとともに,それが包括システムによって解釈されており,きわめて興味深いものである。
 そして解釈は実際にどのように行なわれているのか――ここではわが国の事例をエクスナーが行った解釈が示され,その緻密で柔軟な語り口から事例のパーソナリティーの本質に肉薄し,さらに治療計画へとつなげていく過程が,迫力をもって伝わってくる。
 さらに,ロールシャッハ・テストをはじめ,種々の心理アセスメントは何を目的として行われるべきかという重要な包括的なテーマを通して,とかく機械的と批判されがちな包括システムが,実は何よりも「個人」を尊重し治療に生かそうとするものであることが理解される。このエクスナーの治療哲学はヘルマン・ロールシャッハと通底するものであり,心理アセスメント実務上の確かな指針となるものであろう。

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目次
刊行によせて:John E. Exner, Jr.
まえがき:中村 紀子
Ⅰ部 ロールシャッハ・テストの誕生
第1章 ロールシャッハ・テストの起源と黎明期の発展
第2章 仕立屋のケース:ヘルマン・ロールシャッハ自身によるロールシャッハ・テスト
第Ⅱ部 事例研究
第1章 留年した大学生:そのハイラムダの意味
第2章 中年ビジネスマンの自殺を防ぐ
第3章 過食嘔吐を繰り返す事例への治療計画
第Ⅲ部 治療計画
第1章 治療計画におけるロールシャッハの適用
あとがき:野村 邦子

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ACROSS

◇ACROSS THE HORIZON No.13

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Contents

 JRSC会員の皆様へ 編集代表 中村伸一
 霜山徳爾先生ご昇天 JRSC会長 中村紀子
 特別企画「Finn先生インタビュー」 編集事務局
 国際研修印象記 東京家庭裁判所 渡部かずみ・品川クリニック 末次沙千子
 私とロールシャッハ いわき明星大学 森丈弓
 地区研修印象記 似島学園 吉本美穂
 職場紹介 我孫子メンタルクリニック 塚本優子
 第16回大会のお知らせ
 国際ロールシャッハ及び投映法学会第20回日本大会ご案内
 理事会・各委員会からのお知らせ 倫理委員会、国際交流委員会、情報管理委員会、研修委員会
 国際ロールシャッハ及び投映法学会第20回日本大会組織委員会から
 会員情報
 学会事務局からのお知らせ
 事務局届け出事項変更届
 編集後記
 2011.2.22


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Bulletin

◇国際ロールシャッハ及び投影法学会会報2009 No.19 Bulletin

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Contents

 理事会(役員)
 編集長から
 会長挨拶
 ロールシャッハキアナ
 ヘルマン・ロールシャッハ・アーカイブズ博物館(HRAM)
 第6回サマーセミナー(2009)の報告
 第7回サマーセミナー(2010)についてのお知らせ
 国際ロールシャッハ及び投映法学会第20回日本大会のご案内
 ERA第9回チェコ大会(2009)の報告
 国際ロールシャッハ及び投映法学会ウェッブ・サイト
 ロールシャッハウィキペディア論争
 Wietske van der Reeを追悼して

 メンバー学会からの報告
 1 アルゼンチン人格査定とロールシャッハ研究学会(ADEIP)
 2 イタリアロールシャッハ学会(AIR)
 3 英国ロールシャッハ学会(BRA)
 4 包括システムによるフィンランドロールシャッハ学会(FRA)
 5 ゴイアスロールシャッハ及び投映法学会
 6 スウェーデンロールシャッハ学会
 7 トルコロールシャッハ及び投映法学会
 8 パーソナリティ・アセスメント学会(SPA)

 お知らせ
 文献リスト
 メンバー学会リスト


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Rorschachiana

◇Rorschachiana2009 Vol.30

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Contents

 包括システムによる日本ロールシャッハ学会に加入すると同時に、国際ロールシャッハ及び投映法学会の会員になるため、
世界のロールシャッカーの論文や文献情報が入手できます。論文はRoeschachianaに掲載され、文献リストはBulletinに掲載されています。
http://www.psycontent.com/content/1192-5604/

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