ISR会長挨拶
2016年がスタートいたしました。皆様にとって平和で良い一年になることを願ってお
ります。
2014年7月に国際ロールシャッハ学会(ISR)の会長の任務をお受けしてから、今年で
その中間地点に立つことになります。これまで1年半余り何をしてきたのか、これから
何をしようとしているのかをできるだけ皆様にもお伝えできますよう、私がISRの19か
国、25団体の各会長あてに発信しております『ISR会長からの手紙』を原文のままです
が掲載させていただきます。
今回は、ISRの現状につきまして少し概要をしたためました。
ISRの構成は?
ISRは、ロールシャッハや投映法を愛する19か国から集まった25団体の2649名の団体
メンバーと、16か国から個人でメンバーになっている57名の計2706名によって構成され
ています。以下のようです。
<19か国の構成団体>
アルゼンチン(2)、オーストリア、ブラジル(2)、カナダ、スイス(2)、チェコ
、スペイン、フィンランド、フランス、イスラエル、イタリア(3)、日本(2)、オラ
ンダ、ペルー、スウェーデン、トルコ、イギリス、アメリカ、(特別枠キューバ)
(カッコ内の数字はその国内の団体数)
<16か国の個人メンバー>
アイルランド、アラブ首長国連邦、インド、オーストラリア、ガテマラ、クロアチア
、ギリシャ、中国、チリ、デンマーク、ハンガリー、ペルー、ポーランド、ポルトガル
、ルーマニア、ロシア
そして、改めて現執行部の8名(会長、副会長、事務局長と理事)の出身国をご紹
介しますと以下のようです。
日本、カナダ、トルコ、フランス、イタリア、イギリス、アメリカ
ISRの大会の意味と意義って?
このように、合計34か国から集まってきている私たちの国際学会は、ヘルマン・ロー
ルシャッハの没後スイスのチューリッヒで1949年に第1回の会議が持たれて以降、以下
のように国際大会を開催してきました。第10回ワシントン大会は、それまでヨーロッパ
開催が恒例でしたが、初めて北米での開催となりました。それから30年後、2011年7月
に初めてアジアでのISR大会が東京で開催されました。これは東日本大震災4か月後の開
催でしたが、ISRの歴史の中では大事な役割を果たしました。日本において、ロールシ
ャッハや投映法が長い歴史の中で大事にされ、豊かな土壌を先輩らが脈々と培ってきて
くれていたことに改めて気づき、感謝する気持ちになったのは私だけではなかったと思
います。
言語や文化、宗教や生活習慣の違いを超えて、心理学的なデータを共有して人間理解
し、人々の心理学的な福利に益するために努力する、この学術的な集まりは以下のよう
につながりを作ってつなげてきました。
第1回 1949年 チューリッヒ (スイス)
第2回 1952年 ベルン (スイス)ISR設立記念大会
第3回 1956年 ローマ (イタリア)
第4回 1958年 ブリュッセル (ベルギー)
第5回 1961年 フリべルグ (ドイツ)
第6回 1965年 パリ (フランス)
第7回 1968年 ロンドン (イギリス)
第8回 1971年 サラゴサ (スペイン)
第9回 1977年 フリボルグ (スイス)
第10回 1981年 ワシントン (アメリカ)
第11回 1984年 グアルジャ (ブラジル)
第12回 1987年 バルセロナ (スペイン)
第13回 1990年 パリ (フランス)
第14回 1993年 リスボン (ポルトガル)
第15回 1996年 ボストン (アメリカ)
第16回 1999年 アムステルダム(オランダ)
第17回 2002年 ローマ (イタリア)
第18回 2005年 バルセロナ (スペイン)
第19回 2008年 ブリュッセル (ベルギー)
第20回 2011年 東京 (日本)
第21回 2014年 イスタンブール(トルコ)
第22回 2017年 パリ (フランス)予定
これからのISR?
ヘルマン・ロールシャッハが『精神診断学と10枚の図版』を生み出してから100年
間もなく、Hermann Rorschachが2021年に精神診断学と10枚の図版をスイスで出版して
から100年となります。
Hermann Rorschachが作成した図版を作り続けてきたHans Huberの図版を守ることが
大事と認識しています。図版の刺激が微妙に異なると、それが結果に及ぼす影響は計り
知れません。100年間使いつづけてきたこの10枚の刺激図版の価値を高く評価したいと
思います。
Hermann Rorschachが生きた時代はフロイトやユングが活躍した時代でもあります。
心理学者だけでなく、美術や美学の専門家、哲学者、知覚や認知の専門家などがHerman
n Rorschachの業績に関心を寄せてくださいます。実に彼の人生も、ロールシャッハ法
の発見までの道のりも、残された10枚の図版に至るまでの取捨選択のプロセスについて
も、まだまだミステリーが多く、正しく確認できていないことや調査されていないこと
がたくさんあります。フロイトやユングのように85歳、86歳までの人生を生きることな
く38歳でこの世を去ったHermann Rorschachには弟子も少なく、最大の遺産が10枚の図
版でした。残された学術的、人間的、芸術的なさまざまなデータや遺品を一堂に展示で
きる「アーカイブス・ミュージアム」の再建は2021年の100周年記念に向けて急務と心
しています。
では、機会がありましたらまたISRについてご報告させていただきます。
中村 紀子
ISR会長,JRSC顧問
2016年1月14日