タイトル

要約
広く文献では，子どもが生まれてから今日に至るまでの発達は，家族力動，とりわけ未解決の親の葛藤から大きな影響を受けていることが明らかとなっています。しかし，苦痛のただなかにある子どもたちは，しばしば，子ども自身に病理があると診断されて，親子関係からの強い影響についてはさして考慮されることなく，過剰な医療的措置が施されています。

リー博士の画期的な調査研究である「親の葛藤に対する子どもたちの反応に関する研究」（Children’s response to parental conflicts）では，子どもたちの生理学的覚醒（physiological arousals）が，親の葛藤に直面したときに測定されています。そして，子どもたちの時間の80％が，沈黙の時間を含む，親自身の対人緊張に対する反応に費やされているが判明しています。ある臨床家は，子どもたちを親ポジションに位置付けることを避けるかもしれませんが，この臨床研究は，家族のデブリーフィング・プロトコルを用いて，子どもを戦略的に“癒し手ポジション”（“healer’s” position）に位置付けることを提言しています。そして，この提言は，親と子の双方へのアセスメント，及び治療プロセスに新しい光を投げかけるものとなるかも知れません。

この基調講演で，リー博士は，実際にあった，家族インタビューの場面を録画したビデオを使用して，どのように家族アセスメントを実施するかを実演し，参加者の皆さんと，このアセスメント及び治療プロトコルの有効性を共有することを予定しています。

2) 講師紹介

Wai-Yung LEE博士は，アメリカ家族療法学会，2014年度 Distinguished Contribution to Family Therapy Theory and Practice Award　受賞者でいらっしゃいます。また，家族療法アカデミーのクリニカル・ディレクター，香港大学家族研究所の創設者，ニューヨークのミニューチン家族センターの教育部門担当者としても知られています。また，アメリカ，ヨーロッパ，そしてアジアにおいて，基調講演並びにワークショップを主宰されてこられました。
リー博士の業績は，アジアの家族にまつわる数多くの神話をひもとき，文化に根ざしたいくつかの異なる文脈におけるアプローチの枠組みを作り上げてこられてきたことにあります。
また，リー博士は，S.ミニューチンとその同僚の先生方との共著で『ミニューチンの家族療法セミナー　心理療法家の成長とそのスーパービジョン』（2000年金剛出版），『家族・夫婦面接のための４ステップ』（2010年金剛出版）を発表され，これらの著作は様々な言語に翻訳されております。
　最近では，日本，韓国，中国，台湾，香港の５つのアジアの国と地域において，カップルがそれぞれの相異をどのように克服していくのかを比較研究されておられ，その研究成果は，Family Processの2013年９月号に特別掲載されました。

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