包括システムによる日本ロールシャッハ学会ＪＲＳＣ公式ホームページ

　包括システムによる日本ロールシャッハ学会前会長、空井健三先生が2007年3月31日にすい臓がん、および喉頭がんのため亡くなられました。享年75歳でした。

　追悼文　空井健三先生さようなら


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　包括システムによる日本ロールシャッハ学会　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会長　中村　紀子

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2007年4月14日


　包括システムによる日本ロールシャッハ学会前会長、空井健三先生が2007年3月31日にすい臓がん、および喉頭がんのため亡くなられました。享年75歳でした。


　日本のロールシャッハ学界にはたくさんの先達がおられる。しかし、その中でもひときわ空井健三先生は特別な存在であった。なぜならば、私たち包括システムによる日本ロールシャッハ学会（JRSC）の会長を務められていた任期の間に（2000~2003）、日本ロールシャッハ学会の会長も務められたからである（2002~2005）。空井先生は日本のロールシャッハ学界を掌握し、強力なリーダーシップを発揮した学者であり、教育者であり、ロールシャッカーでおられた。そのような、包容力と理解力のある大先輩を失い大変残念に思う。JRSCの学会会員を代表して、心からお悔やみ申し上げたい。

　空井先生は、日本ロールシャッハ学会会長在職中の2005年に、同学会を国際ロールシャッハ学会に団体登録される大仕事をなされた。「これで、少しでも多くの日本人が国際学会に出かけてくれるでしょう。百聞は一見にしかずで、行けばわかることがいっぱいあるからねぇ」と喜んでおられたにこやかなお顔が忘れられない。2006年2月にエクスナー博士が亡くなられた折にも、「エクスナーさんが亡くなる前に、日本から両方の学会が国際ロールシャッハ学会に参画できてよかった」、としみじみと話されていた。

ＴＯＰヘ
　空井先生は法務省法務技官としてのキャリアを初めとして、日本で初めて中京大学に心理学部を設立しその学部長になられた。シャハテルやバッシュの大著の翻訳もあった。しかし、私が先生の人生の最後の方でご一緒させていただいた舞台は、バルセロナの国際ロールシャッハ学会であった。日本のロールシャッハ事情を紹介するシンポジウムでは、日本におけるロールシャッハの歴史を語られた。内田勇三郎の紹介は新鮮であり、早くから日本にロールシャッハが根づいていたことを紐解かれた。すでに、ご病気は進行されていたはずではあるが、声を振り絞って懸命にご発表なさり、大野恵美会員が傍らについて逐次通訳をし、パワーポイントを駆使しての本当に興味深い内容であった。世界各国から日本の事情に関心がある大御所たちが顔を見せていたが、ワイナー先生はわざわざ空井先生のご発表に謝辞を述べるコメントをしたほどだった。

　空井先生は、常に大局をつかみながら先見の明をお持ちだったと思う。歯に衣着せずにずばずばと語る強面と、茶目っ気たっぷりのユーモアのセンスを微妙なバランスで使いこなしておられた。東大の落語研の最後の高座で「それでは、お後がよろしいようで…」とでもいわんばかりに、去り際軽やかにお出かけになられた空井先生、そちらでエクスナー先生に会われたら、どうぞこれからの日本のロールシャッハ学界の行く末を見守ることも忘れないでください。

　若輩者の私たちを暖かく応援してくださいまして、本当にありがとうございました。

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