20回記念大会は終了しました。
ワークショップE
タイトル:多角的アセスメント ~ロールシャッハ結果を軽やかに用いる~
重い物を持ち上げるときに,滑車を使えば小さな力で作業ができます。滑車は一つよりも複数個組み合わせたほうが,入れる力は少なくて済むし,力の方向を変えることもできます。アセスメントツールは,臨床実践の中ではまさにこの滑車のような働きをしてくれます。
ロールシャッハを中心としたテストバッテリーを組むとしたら,ロールシャッハが定滑車で,その他のアセスメントツールは動滑車に当たるでしょうか。動滑車があることによって,専門家はより多角的な理解がしやすくなります。さらに興味深いことに,援助を求める当事者自身がロールシャッハ結果を理解する上でも役に立つようです。
そこで本ワークショップでは,他のアセスメントツールをどのように用いるとロールシャッハ結果を理解しやすくなるのか,参加者の皆さんと一緒に検討したいと思います。グループでの討議を中心に進める予定です。
ところで,タイトルには「ロールシャッハ結果を軽やかに用いる」とありますが,これはだいぶ舌足らずの表現です(あわてて決めたものですから)。実際には,「援助を求める当事者がロールシャッハ結果を理解しやすくするために,他のアセスメントツールを柔軟に用いる」と言ったほうが適切かもしれません。また,「軽やかに」とは言っても,決して,気軽に,手軽にという意味ではありません。滑車を使っても仕事量(力×距離)は一緒です。理解しやすくなる(力が少なくて済む)としても,そのためにはそれなりの労力が必要です(ひもを引く長さが増す)。アセスメントツールを有効に活用しようとする場合にも,同じことが言えると思います。本ワークショップが,「それなりの労力」を磨くための場になればと思っています。
講師:野田昌道(横浜家庭裁判所川崎支部)
家庭裁判所調査官として,非行や家族の紛争などに関する司法臨床に長く従事しています。また,EJAや大学院などで,ロールシャッハの施行,コーディング,解釈に関する教育,トレーニングにも携わってきました。最近は,Finn先生の治療的アセスメント,特にアセスメント介入セッションに関心を持っています。本ワークショップにも,その影響が表れているかと思います。