研 究 成 果 報 告 書
2015年04月03日
包括システムによる日本ロールシャッハ学会会長 殿
報告(代表)者
氏名:芦村 和美
所属機関:金沢大学医薬保健研究域医学系情報病態学
共同研究者
氏名:村松 朋子
所属:金沢大学医薬保健研究域医学系情報病態学
報告内容
1 研究テーマ(副題を含む)
被虐待体験のある双極性障害者における認知的特徴の検討 ―効果的な心理教育の開発に向けて―
2 研究概要(目的、手続、結果、考察等)
① 目的
最近、虐待を受けた人が、後に双極性障害を発症するという報告が複数見られる(Post et al,2012,など)。また、虐待への早期介入を行うことで双極性障害の悪化を減らせるという報告(Leverich,2002)もあり、双極性障害における被虐待体験の影響は心理教育の方法も含めて検討する必要があると言える。そこで本研究では、効果的な心理教育の開発に向けての予備的研究として、虐待を受けた双極性障害者(以下、被虐待群)と被虐待体験のない双極性障害者(以下、統制群)の認知的な違いについて検討することを目的とした。
② 手続
被虐待群5名と統制群5名に、ロールシャッハテスト、K-SCTを実施し認知的特徴を検討した。さらに、虐待の程度や有無、現在の状態について把握するため、CAPS、IES-R、Childhood Traumatic Events Scale、YMRS、BDI-Ⅱを実施した。
③ 結果と考察
ロールシャッハテストにおいて、両群ともにXA%やX-%の低さから認知的なズレがみられた。一方で、被虐待群は統制群よりも、M-が多く、良質とは言えない内容も見られ、MORにおける自己の傷つきも認められた。K-SCTにおいては、被虐待群は受け身的で否定的な対人態度を呈しやすいことが分かった。以上のことから、双極性障害における認知的なズレは両群ともに認められたが、対人認知の困難さや自己認知における傷つき感は被虐待群のみに認められた。そのため、虐待を受けた双極性障害者の場合、気分の波が、対人面の影響を受けていないかを十分に吟味することが必要であると思われる。(597文字)
3 本研究の発表予定
① 学会の年次大会での発表
2015年度のJRSC年次大会にて、本研究の口頭発表を予定している
② 投稿論文による発表
JRSC年次大会での発表終了後、JRSC学会誌に研究報告の種目での論文の投稿を予定している
4 収支報告(助成金の使途を含む)
研究助成金の執行内訳
謝金 7,125(10名) 7,1250円
ロールシャッハ図版 12,960(1セット) 12,960円
ロールシャッハ用記録用紙 7,776(1セット) 7,776円
K-SCTサンプルセット 25,920(1セット) 25,920円
日本語版YMRSセット 9,800(1セット) 9,800円
Childhood Traumatic Events Scale英文校閲 11,681円
パスワード付USB 2,572(1個) 2,572円
書籍/消耗品 29,20円
合計金額 171,160円