研 究 成 果 報 告 書
2019年 8月 22日
包括システムによる日本ロールシャッハ学会会長 殿
報告(代表)者
岡村 由美子 所属機関 東京大学医学部附属病院精神神経科
報 告 内 容
1 研究テーマ(副題を含む)
「未決定てんかんとPNES(心因性非てんかん性発作)をRorschach testで予測する」
2 研究概要(目的,手続,結果,考察等)
【目的】てんかんと鑑別を要する疾患のひとつにPNESがあり,難治であることも多く,患者・家族・医療資源上の大きな負担となっている。東大病院精神神経科のてんかん検査入院では,長時間ビデオ脳波,画像検査,生理検査などによる精査とともに,各種心理検査を行っている。本研究ではロールシャッハテスト結果から,PNES及びてんかんを疑うべき特徴を検討する。
【方法】2014年9月~2019年1月までの間にてんかん検査入院でロールシャッハテストを施行した66名(てんかん42名,PNES24名)を対象とした。
【結果と考察】ロールシャッハの各変数をPNES群とてんかん群の2群に分け,Mann-WhitneyによるU検定を用いて比較した。その結果,PNES群はてんかん群に比べてエネルギーがあり(W,R,FM↑),外界の刺激を積極的に取り込み(Zf↑),心理的活動が活発で刺激に反応しやすく(es↑),自分に強い関心があることが窺えた(EGO>.44 and r=0↑)。一方で,身体への囚われがあり傷つきやすく(An+Xy↑),毀損感や悲観的な思考の構えがあり(MOR↑),情報処理効率は不良であった(Z>3.5 or<-3.5)。情緒刺激にも脆弱で(色彩や陰影への反応,FY↑),ストレス耐性は低く(D↓),慣習的反応から逸れやすく(X+%↓),現実や情緒刺激から距離をとり((A), Ls↑)知性化するものの自分の感情がわからなくなりやすい(Intel↑)といった心理構造が窺えた。