包括システムによる日本ロールシャッハ学会第22回福岡大会印象記

岸本和子(医療法人西浦会 京阪病院)

 JRSC第22回大会は、平成28年6月11日、12日福岡で行われました。初の九州での大会をみんなで盛りあげよう!という運営スタッフの情熱や暖かさが随所に感じられました。会場となった西南学院大学は、創立100周年を迎える歴史と伝統のある大学であると同時に、アクセスのよい場所に位置しており、私のような九州外からの参加者にとって、優しい場所でもありました。
初日は、中村紀子先生の『体験型~つぶれ型から回復する、とどまる、つぶれ型になるとは~』に参加しました。つぶれ型は、JRSC第20回記念大会特別講演で中村先生が提示された体験型ですが、その名の通り、EA<4.0あるいは、EB両辺のどちらかが0という回避型にも分類できない資質の乏しい一群です。今回のワークショップでは、100ケースのテスト&リテストデータをもとに、つぶれ型を含めた体験型の変化が示されました。つぶれ型の半数以上は、リテストで回避型・内向型・不定型のいずれかの体験型を獲得しました。また、リテストでつぶれ型になった8名において、内向型からつぶれ型に変化したものはありませんでした。さらに、捕虜になって帰還した直後の人25名全員がEA=0~1であったというフランスの研究も紹介され、つぶれ型が危機的状況において身を守る方法であることを改めて浮き彫りにされました。そのように考えると、つぶれ型≒何らかの危機的状況で身を潜めていた人は、回復した後も感情優位の外拡型にはならないのかもしれない、思考優位の内向型をいったん獲得すると、つぶれ型にならずに何とか切り抜けられるということかも?など、いろいろな空想がわきました。午後には、3つのつぶれ型のケースをグループに分かれて検討しました。ロールシャッハデータから、①どこに変化への可能性があるのか?②変わらない場合はなぜ変わらないのか?③変化することのメリットとデメリットは?に焦点を当ててケースを見ましたが、この3つの視点は、日常の臨床においても意識する必要があるところです。午前中は100ケースという全体的な視点から、午後は1ケースをじっくりという個別の視点を学びました。
夕方は、安部計彦先生の特別講演『表現の成り立ちと表現の読み取り』でした。安部先生は箱庭の実践をもとに、「表現はクライエントが意識・無意識的に選択しており、その選択にはさまざまな外的要因・内的要因が作用している」とお話しされました。これは、箱庭に限らず、ロールシャッハももちろんのこと他の心理検査においても、さらにはその人の外見や行動に至るすべての事象に共通するように思いました。
2日目の午前は、研究発表と事例検討でした。今年は、発達障害に関わる発表とともに、非行や受刑者など反社会的行動に関する発表も多かったように思います。私も職場の同僚と『放火に及んだ統合失調症者6名のロールシャッハテストに関する研究』の発表をしましたが、いろいろなご意見をいただき、客観的な視点を得るための大切な機会となりました。
そして、今大会の締めくくりは、中村紀子先生の事例に、坂野雄二先生が指定討論をするというわくわくする事例検討でした。お二人の率直な意見交換がとても楽しく、何より事例検討が進むにつれて、クライエントのイメージが明確になり、まるでクライエントを直接知っているかのような親近感がわいてくるのは、中村先生の丁寧なロールシャッハの読み取りを土台にしたVividなお話ぶりだと思います。さらに、坂野先生の「アセスメントは相関関係であり、因果関係を示してはいない」というご指摘は、アセスメントを過大評価しやすい自らの肝に銘じたい言葉となりました。
JRSCの学会の先生方、大会スタッフの先生方、本当にありがとうございました。やっぱりロールシャッハ面白い!とたくさんのお土産をいただいた2日間でした。

包括システムによる日本ロールシャッハ学会 第22回福岡大会 印象記

岡野泰子(広島国際大学大学院、押尾クリニック)

梅雨の時期、私は、包括システムによる日本ロールシャッハ学会の年次大会に向けて、心も体も自然と準備するようになっている。ただ今大会は、昨年第21回大会の懇親会で聞いた大会宣言が忘れられず、私はいつになく楽しみにしていた。その大会宣言では、大会長の金城正典先生が「ハイラムダで参ります」と、大役を引き受けた不安と緊張をかわいらしく言葉にされていて、その時私自身がハイラムダの研究発表をしたこともあって、とても親近感を感じていた。
そして、2015年度にスタートした認定資格基礎研修CPCSに参加することも、今大会を期待しながら迎えた要因の一つだった。ただ、第21回大会総会で説明を聞いていたものの、実際にどのようなものなのかイメージできずにいたため、不安と緊張も大きかった。
今回準備されたCPCSは、レベル1の単位Bで、小雨降る初日10時から17時まで6時間を費やして開講された。指定された席につくと、講師の市川京子先生と小澤久美子先生が、研修内容のパワーポイントや図版のOHCを準備されていて、適度な学習スペースと必要な視覚資料が提供されることに、私の中の不安と緊張は徐々に緩んでいった。
研修は、まずCPCSの目的としくみが丁寧に説明されるところから始まった。「認定資格」という言葉だけで、技量を試されそうな取っ付き難さがあったが、説明を聞くうちに、包括システムを正しく使えるよう学会が応援してくれるものだということが伝わってきた。
コーディングの解説に入ると、二人の先生がそれぞれのコードの意味や基準を具体例も交えて丁寧に説明下さった。しばしば中村紀子先生の講座を思い出す場面も多く、「ロールシャッハ・テスト ワークブック」や「ロールシャッハ・テスト 包括システムの基礎と解釈の原理」といったテキストに従った内容がしっかり解説され、改めて基本に返り確認しながら学ぶことができた。練習問題に取り組んでその解説も聞くことができ、質問時間も十分に設けられて、受講された他の多くの先生方も満足されたのではないかと拝察した。
クライマックスの講義終わりの試験では、ワークブック等の持ち込みが可能とは言え再度緊張したが、私には基本的なコーディングを確認するもののように感じられた。ここで改めて、CPCSが、包括システムを正しく使うための学習機会の提供であり、一定の基準を満たす技術者を輩出したいとの学会の熱い想いから生まれたシステムであることが感じられた。そして、包括システムが正しく使われることで、心理的支援を必要とする人が一人でも多く社会適応されるようにとの学会の願いも伝わってきた。
今後のCPCS研修会の開催については、単位Bを年次大会の中で準備される予定だそうだが、是非、多くの先生方に受講をお勧めしたい。
二日目は、斉藤美香先生らの「自閉症スペクトラム障害大学生のロールシャッハ・テストとWAISⅢによる社会適応に関する一考察」という一連の研究発表を伺い、続いて兼城賢志先生らの「自閉スペクトラム症の認知特性とサブタイプの検討」にも参加させて頂いた。いずれも、近年の心理臨床で注目されている自閉症スペクトラム障害への支援に実践的に結びつく研究で、私自身の研究にも大変参考になった。
そして、初日夜の懇親会では、金城大会長の挨拶で大いに和み、事務局の労を取って下さった三角健先生のお話、松尾純子先生の司会と中松耕治先生の生ピアノ演奏、美味しいお料理と九州各地の焼酎でさらに盛り上がった。こうして年次大会で全国各地の包括システムを愛する先生方と集い交流することは、自分自身の臨床の大きな支えになると改めて感じる二日間だった。
「包括システムの魅力に出会う㏌九州」とのテーマで開催された今大会だが、私には、「包括システムを愛する学会、そして愛する先生方の魅力に出会った」ひと時だった。
最後になりましたが、今大会の実行委員会の先生方や学生の皆さん、ご参加の先生方に深く感謝申し上げます。

包括システムによる日本ロールシャッハ 学会第22回福岡大会印象記

坂井直子(白百合女子大学学生相談室)

『包括システムの魅力に出会うin九州!』という、魅力的なキャッチフレーズに誘われて参加申し込みをしようとした矢先、4月16日に九州熊本で大きな地震が発生。そして毎日続く地震警報、次々に報道される厳しい被災状況に接し、今九州はどんな様子なのか、心配が募りました。被害は熊本のみならず近県にも及んでいる様子でしたので、6月11日からの福岡大会は予定通り行われるのだろうかと気がかりでした。しかし、参加申し込みは問題なく受理され、とりあえず気持ちを立て直して当日を迎えました。最寄りの西新駅から徒歩で数分、会場の西南学院大学の広々としたキャンパスに初めて足を踏み入れると、緑の木々が気持ちのよい木陰を作って出迎えてくれました。時折行きかう学生たちの明るい様子に、地震の心配はもう大丈夫、という気持ちになりました。
 今回のワークショップは、中村紀子先生と野田昌道先生の二つのコース!贅沢この上ないこの機会、どちらを選ぼうかと困ったのは私だけではないでしょう。最後の最後まで迷った結果、ワークショップB「子の心親知らず ~子どもの心を可視化する~」に参加することにしました。女子大の学生相談室で仕事をしていますと、相談の背景に母娘の問題が見え隠れすることがよくあります。「親の心子知らず」はよく聞きますが、「子の心親知らず」は、日々の仕事で感じることと重なり、ロールシャッハテストからどのような展開が見られるのか楽しみでした。
 15歳女性のケースを題材に、まずしっかりとケース概要を聞きました。家族、生育史、来談経緯の説明を元に自分なりにケースの理解を深めていくのですが、フロアの先生からは更に突っ込んだ質問があり、ケースの女性は次第に生き生きとした姿を目の前に見せてくれるようになっていきました。そして、コーディングのチェックに入ります。どうもⅠ図版の反応からかなりの手ごたえです。ひとつひとつ丁寧にコードをチェックしていただき、難解なコーディングもきれいに収まっていきます。自分のうっかりミスにも気が付きます。昼の休憩を挟み、午後はいよいよ楽しみな解釈です。問題は「家族員との不和、夜遊び、不登校」ということでしたから、ケースのどこにスッと生きられないパーソナリティがあるのか、野田先生の解釈のコツ、見方を教えていただくうちに、それが私のケースとなっていきました。続いて母親のデータを見ていきます。子どものデータはかなり骨太でいろいろなことを訴えていましたが、母親のデータは少し貧弱です。母親が子どもを抱えきれていない様子がデータ上に浮かび上がってきました。最後に参加者で小グループに分かれ、アセスメントクエスチョンの答えを探っていきました。様々な領域で色々なクライエントに対応しておられる先生方のご意見は、なるほどと思うことばかり。それぞれの立場の意見をまとめて新しいアイディアを作り上げていく過程は面白いものです。「どうしたら母娘が仲良く出来るか」の答えとして、一緒にお菓子作りをする、という非常に具体的なアドバイスが導き出されました。どこにでもあるようなアドバイスでありながら、母娘それぞれのロールシャッハテストの変数の集結から焙り出された、確かな裏付けのあるものでした。子どもにも事情があるように親にも事情がある、それがかみ合わなくなったときにどうやら問題が発生するということがこの1日のワークショップでよく理解できました。
 2日間の学会はロールシャッハの魅力に溢れていたなあと、心も頭も満足感でいっぱいになりながら帰路につきました。来年は北海道大学で開催とのことで、そのときまでまた日々ロールシャッハに接しながら、私なりに考えを深めていきたいと思います。

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JRSC会長あいさつ

包括システムによる日本ロールシャッハ学会シンポジウム画像.JPG 本学会は、1993年にアジアでははじめて 国際ロールシャッハ及び投映法学会に団体登録された、日本で最初のロールシャッハ学会として設立されました。設立当時は30人に満たない組織でしたが、学会員数は600名を超える学会に成長しました。

このサイトは,包括システムによる日本ロールシャッハ学会の公式サイトです。
 当学会は,包括システムによるロールシャッハ法を学び,その発展・普及および研修者間の連携・協力をはかっています。例年5月に大会を開催する他,機関誌,ニュースレターを発行し,各地で研修会を実施しています。また,国際ロールシャッハ及び投映法学会(The International Society of the Rorschach and Projective Methods (ISR) )に団体会員として登録し,その活動に参加しています。
 当学会は,平成20年4月7日付けで日本学術会議の協力学術研究団体に指定されました。
English Pages Here! President's message